件名に[SPAM]と付いた営業メールから始まった
8月11日の昼、サイトのお問合せフォームから一通のメールが届きました。件名には、メールサーバの迷惑メール判定で[SPAM]のタグが付いていました。中身は相互リンクの営業です。正直に言うと、読まずに閉じてもおかしくなかったメールです。
読んでみると、様子が違いました。
「コンテンツと顧客データ、配信ログをID一つでつなぎ、一元管理で運用の手間を減らすwriteWiredの考え方に強く共感しました」
これは、うちのサイトに書いてあることです。それも、トップページの飾り文句ではなく、設計の考え方として書いている部分です。よくある営業メールは、会社名だけ差し替えて誰にでも送れる文面をしています。このメールは、うちを読んでいました。
送り主は、AIシステム開発と業務自動化を手掛ける会社でした。AIの会社が、うちの設計思想に言及した営業メールを送ってくる。もしかして、このメール自体がAIで書かれているのではないか。そう思って、返信することにしました。
相互リンクの話が、取材の話になった
最初の返信では、正直なことを書きました。相互リンク自体は前向きに検討したい。ただ、案内された記事がかなり技術的で、うちのブログのどこからリンクすると自然か考えている。そして、聞きたかったことを聞きました。営業先の探索や問い合わせ文面の作成に、AIを活用されているのでしょうか、と。
答えは、そのとおりでした。企業の情報を集めて整理するところと、最初の文面の下書きまでをAIに任せている。ただし、送るかどうかの判断と文面の確認は人が行っている、という返事です。
それなら、この出会いそのものを記事にして、その中で御社を紹介する形が面白いのではないか。そう提案したところ、快諾をいただきました。この記事は、そうしてできています。返信をくださったのは、株式会社ノーコードソリューションズの仙入さんです。
ひとつ書き添えると、仙入さんからの返信には、うちのブログの感想が添えられていました。1,527問作って9割捨てた話や、127本を一日で公開した話に触れて、「うまくいったところだけでなく工程そのものを残されている点が印象に残りました」と。営業の下書きはAIでも、返信は人が読んで書いている。それが伝わる文面でした。
一問一答:AIはどこまでやっているのか
気になったことを7つ、質問として送りました。以下、仙入さんの回答です。
企業候補は、AIがどのように見つけるのですか?
プレスリリースの配信サービスや公的な支援事業者の一覧など、事業内容が書かれている公開情報を起点にリストを作っています。業種で切るのではなく、自社で記事を発信している会社を優先しています。
writeWiredは、どういう理由で候補になったのですか?
自社でブログを持ち、Webとコンテンツまわりで継続的に発信されている点です。相互リンクは記事のある相手でないと成立しないため、そこを見ています。
企業サイトのどのくらいまで、AIに読ませるのですか?
会社情報と事業内容が分かる範囲までです。サイト全体は読ませていません。
最初の問い合わせ文のうち、AIが作った部分と人が直した部分は?
割合を数えたことはないのですが、相手ごとに変わるのは事業への言及と、案内する記事の選定です。ここが下書きの中心で、人はその2点が的外れでないかを見ています。文章の骨組みは共通です。
AIが作った候補を「これは送らない」と判断することは多いですか?
人が落とすより、送信前の工程で落ちるほうが多いです。フォームの構造が会社ごとに違うため、必須項目やreCAPTCHAで進めないものが一定数あります。
この仕組みを作る前と比べて、営業先を探す作業はどう変わりましたか?
リストを作ること自体が仕事の中心ではなくなりました。いまは、誰にどの記事を案内するかを決めるところに時間を使っています。
AIに送信まで任せないのは、失敗した経験からですか? それとも設計ですか?
設計です。フォームを開いて記入まで行い、送信は押さない試運転の工程を独立させていて、そこを通ったものだけが送信に進みます。先日は「人が確認しています」と簡略にお伝えしましたが、正確にはこの工程で確認しています。試さずに一斉送信する形にはしない、というのが最初からの方針です。
送信の前に、押さない工程を挟む
回答を読んで、うちのやり方と重なるところがいくつもありました。
まず、AIの持ち場の切り方です。骨組みは共通で、相手ごとに変わるのは「事業への言及」と「記事の選定」の2点。AIはそこを下書きし、人はそこだけを見る。私が最初のメールで「おっ」と思ったのは、まさにその2点でした。人が確認している場所が、読み手に届く場所と一致しています。
次に、落とし方です。人の目で落とすより、送信前の工程で機械的に落ちるほうが多い。フォームの必須項目やreCAPTCHAで進めなければ、そこで終わり。判断を人の根性に頼らず、工程が門番をしています。うちがフラグメントの配線で「根拠のない答えは載せない」と決めているのと、同じ形です。
そして、送信は押さない、が失敗からの学びではなく最初からの設計だったこと。フォームを開いて記入まで行い、送信は押さない試運転の工程を通ったものだけが先に進む。試してから本番に臨む。うちがCSV取込をテストモードで何度も試してから本番に臨むのと、考え方は同じでした。最初のやり取りでは「人が確認しています」だった説明を、取材では「この工程で確認しています」と言い直してくれたのも、この回答の中で印象に残った部分です。言葉を実態に合わせて直す。それも含めて、設計なのだと思います。
発信している会社が、見つけてもらえる
もうひとつ、回答の中で立ち止まった一文があります。「業種で切るのではなく、自社で記事を発信している会社を優先しています」。
writeWiredが候補になった理由は、ブログを持ち、継続的に発信していたことでした。つまり、この連載を続けていたこと自体が、この出会いを連れてきたことになります。
このブログは、検索順位を追うのをやめたところから始まりました(第1回)。読む相手が人からAIに広がるなら、営業トークではなく事実を一定のトーンで書き続けるほうがいい。そう考えて続けてきましたが、読みに来たのが「AIで営業先を探す仕組み」だったのは、想定の少し斜め上でした。書いてあるから、見つかる。発信は、こういう形でも返ってくるようです。
今回ご連絡いただいたのは、AIシステム開発・業務自動化|株式会社ノーコードソリューションズさんです。今回の仕組みも、まさに自社業務でのAI活用の一例でした。