FAQを117問まで作って、ふと思いました。
FAQは「読者の問い」から始まって、関係する事実を探して、答える。この向きで作ってきました。では、逆はどうか。先に事実の層があるのだから、そこから「まだ独立したコンテンツになっていない答え」を掘り出せないか。
事実の層とは、機能リファレンスのことです。管理画面1画面につき1ページ、127本から始めて、いまは131本あります。ここには定義だけでなく、補足や特長として、細かい動きまで書いてあります。
この131本を素材に、AIに掘らせてみました。
同じ材料で、2つのAIが、全然違う場所を掘った
ChatGPTとClaudeに、同じ機能リファレンスと、同じFAQ 117問と、同じ指示を渡しました。FAQは素材ではなく、「すでに同じ答えが存在しないか」を確かめる照合用です。既存のFAQと同じ答えになる候補は、作らない。それぞれ10本ずつ掘らせます。
出てきた20本を並べて、まず驚きました。タイトルが1本も重なっていません。
同じ131本の事実、同じ117問の照合、同じ指示。それでも、掘る場所が全然違う。事実の層には、切り口がまだ眠っている。これは良い知らせでした。
悪い知らせは、その次に来ました。
「重複なし」の自己申告は、信用できませんでした
20本を、AI同士で相互に監査させました。相手の10本を、FAQ 117問に当て直させます。
結果、片方の10本のうち5本が、既存FAQの言い換えでした。たとえば「コンテンツの状態と内容は、別々の履歴です」という候補。これはFAQに「状態は自動、内容は手動」という同じ答えが、ほぼ同じ言葉で載っています。
本人(というのも変ですが)は、10本すべてに「重複なし」と書いていました。嘘をついたのではありません。判定が甘かったのです。文面が違えば別物に見える。でも、読者が持ち帰る答えは同じでした。
ここでルールを1つ足しました。「重複なし」と書くことを禁止して、代わりに「最も近いFAQの番号」と「そのFAQが触れていない点」を必ず書かせる。近いFAQを名指しできない候補は、その時点で落ちます。書かせる内容を変えるだけで、判定の甘さが工程から消えました。
正しいのに、つまらない
監査を通った候補は、事実として正確です。根拠も引けます。FAQとも重なっていません。
読んでみた感想は、「ふーん」でした。
たとえばこんなタイトルです。「サイト内検索への表示には時間がかかります」。事実です。機能リファレンスに根拠もあります。でも、マニュアルの小見出しにしか見えません。
ここで気づいたのは、意外性と面白さは別物だ、ということです。AIは「FAQにない」「普通と違う」を探すのは得意です。でも、それを続けると、珍しい仕様のコレクションができあがります。珍しさは、読者にとっての面白さではありませんでした。
面白くすると、根拠を越える
では面白くしよう、とすると、今度は逆の事故が起きます。
「フォルダを移動しただけでは、配下のURLは揃いません」という候補がありました。タイトルとしては引きがあります。ただ、機能リファレンスに書いてあるのは「移動できる」「パスを付け直す操作が別にある」まで。「移動しただけでは揃わない」と言い切るには、「移動時に自動では付け直されない」という事実が要ります。それは書いてありませんでした。
根拠に合わせて言い直すと、「フォルダの移動と、URLの付け直しは別の操作です」。正確です。そして、つまらない。
この候補は落としました。そのとき決めたルールが、この実験で一番効いたと思います。
面白くすると根拠を越え、根拠に戻すと面白くなくなるなら、その候補は成立していない。安全な言い換えで救済せず、落とす。
「ことがあります」は、免責に見える
もう1つ、AIの癖が見つかりました。語尾です。
AIは根拠を越えないために、「〜ことがあります」「〜場合があります」を付けたがります。書き手としては保険のつもりです。でも読者から見ると、注意書きや免責文に見えます。
条件があるなら、本文で説明すればいい。タイトルは、根拠の範囲で言い切れるなら、言い切る。
さっきの検索の例は、最終的にこうなりました。
「公開したページは、検索にすぐ出ません」
言っている事実は同じです。ページの公開と検索の索引作りが別々に動いているので、公開直後のページは索引の更新まで検索に載らない。機能リファレンスにそのまま書いてあります。変えたのは、仕組みの要約をやめて、読者から見て実際に起きることを、読者の言葉で言い切ったことだけです。
残ったルールは、一行でした
一日の試行錯誤で、ルールは7つできました。照合のさせ方や工程の順番のルールが多いのですが、タイトルについては、最後に一行へ戻りました。
タイトルは、読者から見て実際どう動くかを言い切る。言い切って根拠を越えるものだけ、落とす。
この形で残ったのが16本です。「ショート」というコーナーにして公開しました。
1本1結論、本文は根拠の説明だけ。各ページの根拠から機能リファレンスへたどれるので、入口は読み物、出口は事実、という作りです。FAQに根拠を張ったときと同じで、書けることは根拠が決めます。
ここで、終わるはずでした
16本できて、コーナーとして公開して、ここで実験は終わるはずでした。
ところが翌日、まったく別の入口が見つかりました。事実の書き方を変えたのではありません。見る人の立場を変えただけです。同じ131本の事実から、二つ目のコーナーが生まれました。
きっかけは、一枚の映画のポスターでした。
その話は、次回に書きます。