(この回に出てくるAIは二つです。私のClaudeと、綿田くんのClaude Desktopです)

前回までのあらすじ

「一行も書かずに、ここまで作った」で、機能リファレンス127本をはじめとするコンテンツを、私は一行も書かずに作った話をしました。書く代わりに喋り、AIが書き、CSVで出し入れした。

ここまでは全部コンテンツの話です。今回は開発です。コードより先に、Markdownを書きました。

機能を1つ、作ることにした

writeWiredの入力フォームに、新しいHTMLの出力方法を1つ追加することにしました。以前から直したかったところです。

コードではなく、仕様をMarkdownで書いた

8月25日。私のClaudeに製品のソースを渡して、聞きました。「どこを直したらいいかな」。

「このソースが足りない」と言われて足す。「ここを直す」と返ってきたものを読んで、それは違うと戻す。ブラウザの中でそのやり取りを何度かして、最後にClaudeがMarkdownに書きました。中身は、一言で何を作るか、なぜ作るか、出力の約束、触らないもの、開発物の一覧と見当、受け入れの基準。コードは1行もありません。開発物は5つ、見当は1〜2週間、と書いてあります。

Markdownに私が書いたものはありません。私がしたのは、ソースを渡すことと、修正箇所に誤りがないかを見ることです。

できあがったMarkdownを、綿田くんのClaudeに読ませてどこまで対応できるか。これを試すのが今回の目的です。もう1枚、綿田くんのClaudeあてに申し送りを付けました。直すソースは同じでも、仕様を書くAIと作業をするAIは別で、共通の言葉は仕様のMarkdownだけです。申し送りに書いたことは、ほぼ一つです。仕様と違うものがあったら、黙って変えずに、その箇所を回答のMarkdownで私のClaudeへ戻してください。 読んで解釈できない箇所も、実物と食い違う箇所も、作業側では直さない、という約束です。

Markdownを、綿田くんのAIが食べた

ここから先、私は書いていません。往復を表にします。

向き 渡したもの
8/25 私 → 綿田くん 仕様のMarkdown・申し送り
8/26 綿田くん → 私 確認結果(修正6件・質問3件)と、直したサンプルHTML・CSS
8/26 私 → 綿田くん 6件すべて採用・3件を裁定・直した版を正に置き換え
8/27 午前 綿田くん → 私 検証結果(確定バグ0・CSSの差し戻し1件・質問4件・疑い1件)
8/27 午前 私 → 綿田くん 質問のうち2件は仕様の誤りと認める・2件はv1の対象外で確定・疑い1件は取込データ側
8/27 午後 綿田くん → 私 受け入れ完了(全観点合格・実装バグ1件は自分で直した)
8/27 午後 私 → 綿田くん 合格・仕様を訂正

綿田くんのClaude Desktopが開発用のMarkdownを読み、コードの叩き台を出し、綿田くんがソースと、ローカルで動かした画面で確かめて、報告と質問のMarkdownを作成して返してきた。8月26日の「修正6件」がそれです。

ここで、二つのAIの置かれ方の違いが効きます。私のClaudeはブラウザの中にいて、私が渡したソースしか見えません。綿田くんのClaudeはDesktopで、ソース一式を読み、ローカルで動かせます。正確なことは、作業する側にしか分かりません。だから、仕様と実物が違っていても作業側で直さず、違いを私のClaudeに戻す。私のClaudeがそれを吟味して、修正の方針を返す。8月27日の往復は、全部この形です。

この往復で、私のClaudeが書いた仕様の誤りが3つ見つかりました。3つとも、綿田くん側が実際に動かしたときに分かったもので、読んでいるだけでは分かりません。私のClaudeはソースを読んでいますが、動かしてはいない。AIが書いた仕様は、正しそうに見えます。裏を取る工程を、人が持っていないと危ない。

人がやったこと

綿田くん
運ぶ 自分のClaudeが出したMarkdownを綿田くんに渡す・返ってきたMarkdownを自分のClaudeに渡す 自分のClaudeが出したMarkdownを私に渡す・受け取ったMarkdownを自分のClaudeに渡す
決める 何を作るか・仕様の修正箇所に誤りがないか
確かめる 画面3枚で受け入れの判定 ローカルで動かして画面を見る・通しで登録する

コードは、二人とも書いていません。往復のMarkdownも、一方のAIが出したものを、そのままもう一方のAIに渡しただけです。二人のAIが文書でやり取りして、間にいる人間はファイルを運んでいる。コピペ職人です。

ただ、運ぶだけでもなかった。何を作るか決めて、仕様の誤りを戻したのは私です。動かして確かめたのは綿田くんです。運ぶ代わりに、決めて、確かめた。書く代わりに喋った、と同じ形です。

3日で終わった

8月25日に仕様を書き、27日に受け入れが済み、同じ日にwritewired.jpのお問い合わせフォームを新しい出力方法に切り替えました。見当の1〜2週間は、3日でした。

判断だけが、残った

コンテンツのときはCSVでした。今回はMarkdownでした。出し入れするものが変わっただけで、人の位置はあまり変わりませんでした。

本文もコードも書かない。そのかわり、何を作るかを決め、返ってきたものを確かめる。今回は、それで1つ機能が増えました。