「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」

という映画のポスターを見ました。

裁判の事実は一つです。同じ事実が、判決文にもなれば、法廷ニュースにもなれば、この叫びにもなる。事実は一切動いていません。動いているのは、誰の目線で、どんな言葉で呼ぶかだけです。

前日に作った16本のことを考えました。あれは「観測の言い切り」という、一つの声で書いたものです。声は、他にもあるのではないか。

Qを、上司のセリフにしてみた

試しに、こういう質問を立ててみました。

「先週配信したメールの文面、間違いがあったから直しておいて」と言われました。直せますか?

答えは、機能リファレンスにあります。そのまま書くと、こうなります。

直せません。そして、直せないことに理由があります。送信が終わったメールの内容は変更できない仕様で、送ったメールの証跡をそのまま保全するためです。訂正が必要な場合は、記録を書き換えるのではなく、訂正の連絡を新しく送る側で行うことになります。

質問は現場の言葉で、答えは仕様のままです。答えの側は、状況に一切乗っていません。「直しておいて」と言われているのに、「直せません」と返す。この落差は、私が作ったものではありません。現実に、もともとあるものです。私は事実を置いただけです。

この形で、15本作りました。かかった時間は、前日の何分の一かです。理由ははっきりしていて、答えに使った事実は、すべて前日に根拠を確認し終えたものだからです。新しく確認した事実は、ゼロ。変えたのは、質問の立て方だけでした。

声を出して笑った

できあがった15本を読み返して、声を出して笑いました。この連載で、初めてのことです。

「ひな形を直したはずなのに、直っていないページがある」と言われました。直し漏れですか?

「ページを直す前に、まず数字を見ろ」と言われます。そのたびに解析の画面を開くのですか?

いるんです、こういう場面が。そして答えは全部、淡々としています。直し漏れとは限りません。編集画面の中で見られます。仕様が答えるだけで、誰のことも責めません。

前日にあれだけ苦労した「面白さ」が、こちらでは何もしないのに出てきました。事実の書き方は一文字も面白くしていません。読者の現実を質問側に持ち込んだだけです。

笑いは、狙わないことにしました

ここで一つ、決めごとをしました。笑いは狙わない。

この15本は、面白くしようとして書いたものではありません。ありそうな場面を正直に置いて、正確な答えを淡々と返したら、落差が勝手にそうなっただけです。次から「笑える質問」を探しにいくと、場面を盛りたくなります。盛った場面は、前回書いたのと同じ理由で、根拠と喧嘩を始めます。

狙うのは、正直な場面と、正確な答えだけ。笑いが出たら、副産物です。

「コーナー」という棚にしました

二つできたので、置き場を作りました。

コーナー

一つ目が「ショート」、事実から見つけた、ちょっと気になる話。二つ目が「担当者が上司を説得するには」、仕事で実際に言われそうなことに、確認済みの事実で答えます。

表向きは別々の読み物ですが、地下では同じ131本の機能リファレンスにつながっています。どのページも、根拠のリンクから機能リファレンスへたどれます。質問は、よくある場面として編集部(私です)が設定したもので、その旨も各コーナーに書いてあります。

入口は読み物、出口は事実。この作りは変えていません。

次は、別の入口を探します

今回は、担当者が上司から言われる場面でした。では、上司の側から見たらどうなるのか。決裁する人なら。引き継いだばかりの人なら。別の状況から同じ事実を見たら、また違う言葉になるかもしれません。

事実は増えていません。入口が増えていきます。

どの入口から入っても、たどり着く先は同じ機能リファレンスです。それで届く人が変わるのか。次もやってみます。