前回までのあらすじ
以前、Single Source of Truthを調べたら、もうやっていたという記事の中で、「Markdownで表現できないものをコンテンツ側から減らす」という宿題を予告しました。今回はその回です。
ただ、先に結論を言うと、減らす話にはなりませんでした。減らすつもりで数えてみたら、減らすものがほとんどなかったからです。
事例だけが、手書きのまま残っていた
うちのサイトは、機能リファレンスもFAQもブログも、AIとCSVでやり取りして作る形になっています。本文はMarkdownで持ち、テンプレートが表示を組み立てます。前回は、その運用で起きたIDの話でした。
その中で、導入事例だけが昔ながらの手書きHTMLでした。写真の回り込みがあり、表があり、インタビュー記事は誌面のような組み方をしています。「事例は一点物だから、Markdownには収まらない」と、なんとなく思っていました。
対象は20本。うちの事例には型が二つあります。ひとつは、どんな会社が、どんなサイトを、どの機能で作ったのかを、表と画面写真で淡々と紹介する型。もうひとつは、担当者に話を聞いて記事にしたインタビュー型で、これが2本あります。以下、前者をスペック型と呼びます。
スマホで見たら、ただのMarkdownだった
いきなり20本やる前に、両極の2本で確かめました。スペック型の1本と、インタビュー型の1本です。
スペック型は、ほぼ無傷でMarkdownに乗りました。減らしたのは、リストの中に見出しを入れていた箇所と、表のセルの中で改行していた箇所。どちらも書き方を変えれば済む話でした。
インタビュー型はどうか。凝った組み方をしているつもりでしたが、スマホ表示で見てみたら、写真と文章が上から順に並んでいるだけでした。レイアウトの装飾を剥ぐと、素の姿はただのMarkdownだったのです。減らすのはPC側の写真の回り込みくらい。これは諦めると決めました。
データは変えない。表現の側で選ぶ
ここで整理がつきました。
コンテンツが持つのはMarkdownの本文だけ。それをHTMLにする工程は、テンプレートが変換してもいいし、凝った見せ方をしたい記事だけAIに組ませてもいい。データは不変で、表現のやり方が選べるだけです。
書く工程にはすでにAIがいました。今回、出す工程にもAIという選択肢が加わった。それだけの話です。
念のため、演出のパターンも用意する裁定までしました。ふつうの記事は淡々と、インタビューは誌面ふうに、遊びたいページは派手に。切り替えられる準備をしてから、20本に取りかかりました。
20本を、CSV1枚で
作業はいつもの形です。
- AIが公開中の20ページを取得し、本文をMarkdownに変換する
- ついでに摩耗を掃除する
- CSV1枚(20行)にまとめて、CMSに取り込む
- 20画面ぜんぶを目で確認する
摩耗の掃除では、面白いものが出てきました。見た目はふつうの「大」なのに、検索でヒットしない別の文字が、7ページに紛れていたのです。手書きの時代にコピーで持ち込んだものらしく、目視では絶対に見つかりません。ほかにも誤字や、説明文の脱字が拾われました。ページを機械が読める形に移すと、こういうものが炙り出されます。
用意した演出は、一つも使わなかった
取り込んで、20画面を確認しました。全部、成立していました。
驚いたのはインタビューの2本です。誌面ふうに組み直すつもりで、AIに任せる段取りまで決めていたのに、淡々としたMarkdownのまま通した画面を見たら、何の違和感もありませんでした。ページの上にはヘッダーがあり、本文の見出しから目次が自動で生まれ、横にはナビゲーションが並ぶ。枠の側が、すでに誌面の仕事をしていたのです。
結局、手を入れたのは表示側のCSSを3点だけ。画像を中央に寄せる、画像の最大幅、表の左の列の幅。データは1文字も触っていません。用意した演出パターンは、一つも出番がありませんでした。
見た目の心配
凝った組み方をやめたら事例が安っぽくなるんじゃないかと心配していました。でも、実際に20本を通して見たら、その心配はありませんでした。
減らす覚悟で始めた作業は、減らすものがほとんどないまま終わりました。Markdownで表現できないものは、思っていたより、ずっと少なかったです。