CMSを導入したものの、「思ったより使いにくい」「更新が面倒」「結局外注頼みになった」と感じてしまうケースは少なくありません。とくに実務担当者にとっては、「機能が豊富」よりも「日々の運用がストレスなく回る」ことが何より重要です。
この章では、CMSの導入・選定で後悔しないために、本当にチェックすべき6つのポイントを、現場視点で解説します。自社の課題や将来像と照らし合わせながら、最適な選択肢を見つけましょう。
1. スケーラビリティ(将来の拡張に対応できるか)
1-1. コンテンツ量の増加に耐えられるか
CMSは、最初は「扱うコンテンツ数も少ないし、何でもよさそう」と思いがちですが、数年後には何百、何千というページが蓄積されていきます。会員向けサイトであれば、資料や動画、Q&Aなど多様な形式のコンテンツも加わり、情報量は加速度的に増えていきます。
このとき、CMSのデータ構造や設計が貧弱だと、「検索性が悪い」「編集画面が重い」「整理が追いつかない」といった問題が頻発します。スモールスタートでも、大規模運用への成長を見越して設計されているか、要確認です。
1-2. サイト構造の変更や多言語対応が可能か
将来的にブランド別サイトや国・地域別の言語対応が必要になるケースも少なくありません。その際に、サイト構造を柔軟に拡張できるCMSかどうかは重要です。
たとえば「共通コンテンツを一元管理し、複数のサイトに出し分ける」機能があると、管理工数が大きく削減できます。多言語や複数ドメイン対応の仕組みがあるか、テンプレートやコンテンツの再利用性に優れているかも、あらかじめチェックしましょう。
2. 拡張性(自社の業務にフィットするか)
2-1. プラグインやAPIによる拡張性
企業の業務フローやマーケティング手法は、会社ごとに大きく異なります。そのため、CMSにも柔軟な拡張性が求められます。具体的には、次のような機能が追加・連携可能かを見ておきましょう:
- 顧客管理システム(CRM)との連携
- アンケートやチャット、フォーム連携
- メール配信ツールやMAツールとの連携
APIの公開やWebhook対応、あるいは豊富なプラグインが揃っているかも要確認です。業務が変化しても柔軟に対応できる基盤であることが、長く使えるCMSの条件です。
2-2. 自社独自の運用フローに組み込めるか
社内の承認フローや管理ルールをどこまでCMSに組み込めるかも、実務上は非常に重要です。たとえば「編集→承認→公開」という流れをルール化しておきたい場合、それをCMS上で再現できるかどうか。
また、「テンプレートを使ったコンテンツ作成」や「複数担当者での分業」にも対応できる仕組みがあれば、運用負担を軽減できます。CMSは、単なる“情報登録ツール”ではなく、業務を支える“業務基盤”と捉えましょう。
3. UI・UX(現場担当者が使いやすいか)
3-1. ノーコードでどこまでできるか
「誰でも簡単に使えるCMS」と謳われていても、実際に触ってみるとHTMLやCSSの知識が求められる…ということはよくあります。
現場で求められるのは、「ノーコードでページを作成・更新できること」「編集画面の見た目と公開後のページが近いこと」「直感的に操作できること」。CMSのUIはデモなどでしっかり確認し、自社のスキルレベルと合っているか見極める必要があります。
3-2. 管理画面の使い勝手
日々の更新業務で使う管理画面が、煩雑でストレスフルだと、運用効率は大きく下がります。カテゴリの整理がしやすいか、目的のページをすぐに探せる検索機能があるか、複数人での管理がスムーズかといった観点も重要です。
4. サポート体制(困ったときに頼れるか)
4-1. 導入時の支援体制
CMSを導入して最初に立ちはだかる壁が「初期設定」です。デザインテンプレートの設定や、コンテンツ構造の設計、外部ツールとの連携など、最初の構築段階でつまずくと、その後の運用にも影響が出ます。
このため、導入支援があるかどうかは極めて重要です。とくに初めてCMSを扱う企業にとっては、「構築支援」「トレーニング」「サンプル提供」などがあると、安心してスタートできます。
4-2. 問い合わせ対応やトラブル時のサポート
運用フェーズに入ってからも、技術的な問題や設定ミスが発生することは避けられません。トラブル時にすぐに対応してくれる窓口があるか、サポートの対応時間や手段(チャット・メール・電話)が明示されているかも確認しましょう。
また、FAQやマニュアル、ナレッジベースが充実していると、自己解決のスピードも上がります。
5. セキュリティ(安心して使えるか)
5-1. アクセス権限管理やログ機能
CMSが扱う情報には、公開ページだけでなく、個人情報や営業資料など、守るべき機密情報が含まれている場合があります。誰が・いつ・どの情報にアクセスしたかを記録する「操作ログ機能」や、ユーザーごとの「閲覧・編集権限設定」は、安心して運用するための必須機能です。
5-2. セキュリティアップデートの頻度
近年ではCMSを狙った攻撃も増加しています。脆弱性への対応が迅速か、セキュリティパッチが定期的に配布されているかなど、開発体制そのものが信頼できるかを見極めましょう。
クラウド型の場合は、セキュリティアップデートが自動的に反映される仕組みかどうかもポイントです。
6. 費用対効果(コストと成果のバランス)
6-1. 初期費用と月額費用の内訳
CMSのコストは「ライセンス費」だけでなく、「初期構築」「テンプレート開発」「運用サポート」など、さまざまな要素で構成されます。加えて、機能追加やカスタマイズのたびに費用が発生する場合もあります。
「基本機能だけなら安いけど、実務に必要な機能を揃えると結局高くつく」というケースもあるため、見積時には必ず全体像を把握することが大切です。
6-2. 実務に対してどこまで効果があるか
CMSの効果は、「制作コストを下げる」「更新頻度を上げる」「コンバージョンを向上させる」といった目に見える成果にも直結します。
単に「費用が安いか」ではなく、「そのCMSを使うことでどんな価値が得られるか」を明確にしておくことで、投資としての意義も判断しやすくなります。
7. まとめ
CMSは、導入して終わりではありません。むしろ、本当のスタートは「運用を回し始めてから」。だからこそ、“今の課題”だけでなく、“未来の成長”にも対応できるCMSかどうかを、実務の視点でじっくり見極めることが、後悔しない選び方につながります。