1. メール配信で起こりがちな失敗とは?
BtoBにおけるメールマーケティングでは、配信対象も運用者も限られるため、BtoCと比べて“人的ミス”や“配信精度”がより強く問われます。しかも、一度の誤配信が信頼失墜や配信停止など、営業的ダメージにつながることも少なくありません。
1-1. よくある失敗パターン一覧
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誤配信(対象外への配信):リスト抽出の条件ミスや配信対象の確認不足により、本来除外すべき顧客に誤って配信してしまう。
- 事例:過去に商談失注した企業に「ご検討ありがとうございました」という内容のメールが送られてしまい、営業クレームに発展。
- 背景:CRMとMAツールのステータスが同期されておらず、ステータスが"失注"であることに気づかず抽出。
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重複配信:ステップメールとキャンペーンメールが重複したり、同一リストを複数の担当者が配信。
- 事例:セミナー案内が同日に2通届き、「しつこい」とのフィードバックが寄せられた。
- 背景:別チームで同様のリストを使用していたが、リストの利用状況を確認する手段がなく、社内共有も不十分だった。
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配信ミス(文面やリンクの誤り):日付、担当者名、URL、差し込み項目のミスにより誤情報を送信。
- 事例:クリック先が404エラーだったため、CVチャンスを失い、後日お詫びメールの再送が必要になった。
- 背景:CMS内のコンテンツ公開予約日とリンクURLの発行日がずれていたが、配信側ではその確認手段がなかった。
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配信タイミングのズレ:キャンペーンやリリース情報など、連携すべき施策とタイミングがずれてしまう。
- 事例:展示会直前に送るはずの案内メールがイベント終了後に届き、信頼失墜に。
- 背景:MA側で予約設定はしていたが、CMSの更新作業が遅延し、担当者が配信予約を1週間遅れで誤設定。
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スパム認定や迷惑メールフォルダへの振り分け:IPやドメイン評価の低下、HTML構造の不備による配信到達率の低下。
- 事例:装飾過多なHTMLテンプレートで送信したメールが大半Gmailで迷惑フォルダ行きとなり、開封率が10%未満に。
- 背景:HTMLのコード内に古いトラッキングコードや、画像読み込み不備が混在していた。
1-2. よくある原因と背景
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リスト設計や抽出条件の属人化:担当者ごとのやり方が異なり、正しい除外処理が行われない。
- 例:前任者の抽出ロジックが口頭伝承で、異動後に意図が継承されずミス発生。
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原稿やリンクチェックのフロー不備:複数名でのレビュー体制がなく、うっかりミスが見逃される。
- 例:誤字脱字や404リンクが、そのまま本番配信されてしまう。
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CMSやMAツールとの連携不足:ステータス連携やセグメント条件の同期ができておらず、意図しない宛先に配信される。
- 例:会員退会後もMA側で情報が残っており、退会者に継続して配信されてしまった。
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ステップ設計の変更に伴う影響の未整理:旧シナリオとの重複を防げず、想定外のタイミングでメールが送られる。
- 例:導入期に組んだステップメールと新しいシナリオが重複し、連日の配信となった。
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配信システムにおけるテスト環境不足:本番配信しか試せず、差し込みや見た目の事前確認が不十分。
- 例:動的コンテンツがうまく表示されず、受信者によって見た目にばらつきが発生。
2. 配信ミスを防ぐための仕組みと対策
一時的な注意ではなく、“仕組み”としてミスを予防する視点が重要です。再発防止やチーム内でのチェック精度を高める工夫を解説します。
2-1. 実務に活かせるチェックリスト例
チェック項目 | 内容 | 備考 |
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配信対象リストの抽出条件確認 | 属性・行動・除外条件の3点確認 | 二重除外や意図しないセグメント混入を防ぐ |
原稿レビュー | 社内確認ルールに基づく校閲 | 件名・差し込み項目・URL・日時の4点チェック |
テスト送信の実施 | 3種類以上のアドレスへの送信 | HTML崩れ、差し込み確認、迷惑メールフィルタ確認 |
配信スケジュール管理 | MA/CMS側の連携確認 | ステップやリマインドとの干渉を防ぐ |
2-2. 再発を防ぐための改善策
- 属人化を防ぐドキュメント管理:抽出条件、ステップ設計、配信対象のマスタ情報などを明文化し共有。
- MAツールやCMSとの接続精度強化:タグ設定やセグメント条件をCMS側からも操作・確認できる仕組みづくり。
- 配信トラブル共有会の定期開催:チーム内でのミスを責めずに学ぶ文化をつくり、知見を蓄積。
- 配信直前レビューのテンプレート化:複数人でのレビュー項目を定型化して心理的ハードルを下げる。
- ロール別の配信権限設定:テスト配信と本番配信を分離し、ダブルチェックが可能な役割分担を構築。
メール配信において“完全なゼロミス”は理想ですが、実際の運用では再発防止の仕組み化が最も重要です。BtoBでの信頼構築を支えるためにも、「配信精度の高さ」そのものを競争力として捉え、チェック体制や情報設計の見直しを進めましょう。