1. はじめに

CMS(コンテンツ管理システム)を導入する際、最初に検討すべきポイントの一つが「CMSの提供形態」です。

近年、企業が自社のWebサイトや会員サイトを持つことは当たり前になっており、その運用を効率化するためにCMSを導入するケースが急増しています。しかし、CMSには複数の提供形態があり、それぞれ特徴や適性が異なるため、目的や組織の体制に合わせた選定が不可欠です。

本記事では、主に次の3つのタイプに分けて、それぞれの特徴や向いているケースを比較します。

  • クラウド型CMS
  • オンプレミス型CMS(オンプレ型)
  • 自社開発CMS

それぞれのメリット・デメリットや導入時の注意点を整理し、自社にとって最適なCMS選びの参考にしてください。

2. 各CMSタイプの特徴と違い

2-1. クラウド型CMS

概要クラウド型CMSは、SaaS(Software as a Service)として提供され、インターネット経由で利用するタイプのCMSです。サーバーやインフラの管理はベンダー側が行うため、ユーザーはコンテンツの作成と運用に集中できます。

メリット

  • サーバー管理が不要で手軽に導入可能
  • 初期コストが比較的低く、定額制で予算が立てやすい
  • 常に最新版が使える(自動アップデート)
  • 複数拠点・リモートでも運用しやすい
  • セキュリティ対応や障害対応もベンダーが実施

デメリット

  • カスタマイズ性に制限があることが多い(テンプレート・機能の制限)
  • データがクラウドに保管されるため、法令や社内ポリシーに配慮が必要
  • サービス終了・仕様変更など、ベンダー依存のリスクがある

向いているケース

  • スピーディーにサイトを立ち上げたい
  • 技術的なリソースが限られている
  • 複数人・複数拠点での運用が前提
  • 小規模〜中規模のWeb運用やプロモーションサイト

2-2. オンプレミス型CMS

概要オンプレ型CMSは、自社または外部のサーバーにCMSをインストールし、社内で管理・運用するタイプです。クラウド型と比べると、カスタマイズやセキュリティ面での自由度が高い一方で、運用負荷も発生します。

メリット

  • 高度なカスタマイズが可能(UI/UXやワークフローも柔軟に設計可能)
  • セキュリティポリシーに合わせて運用できる(ファイアウォールやVPNの活用など)
  • 他システムとの柔軟な連携がしやすい(CRM、MA、認証基盤など)
  • 社内でデータを保持・管理できる安心感

デメリット

  • 導入やアップデートにコストと工数がかかる(サーバー費用や人件費)
  • サーバーやインフラの保守管理が必要(監視体制や障害対応)
  • 技術的な知見が求められる(社内に専任人材が必要)

向いているケース

  • セキュリティ要件が厳しい業界(医療、金融、官公庁など)
  • 既存の基幹システムと連携させたい
  • 大規模サイト・会員管理機能が必要
  • 社内にITリソースがあり、運用を自社でコントロールしたい

2-3. 自社開発CMS

概要自社で独自にCMSを開発・構築するスタイルです。完全にオリジナルの設計が可能で、業務要件やビジネスモデルに最適化された仕組みを作ることができます。

メリット

  • 完全に業務要件にフィットしたシステム設計ができる
  • 将来のビジネス変化にも柔軟に対応しやすい(段階的な機能拡張)
  • 他社との差別化につながる(独自機能やUX)
  • UI/UX、API、管理画面などを自社の方針で統一できる

デメリット

  • 開発・保守に多大なコストとリソースがかかる
  • 開発者の属人化リスク(人材が離れると引き継ぎが困難)
  • セキュリティやパフォーマンス面の責任もすべて自社に
  • サポートやトラブル対応も内製化が必要

向いているケース

  • 業務に特化した独自機能が多い
  • 十分な開発体制・ノウハウがある
  • 長期的な視点で投資を考えている
  • プロダクトやサービスにCMSを組み込む場合

3. 比較表

項目 クラウド型 オンプレ型 自社開発
初期導入コスト 中〜高
カスタマイズ性 △(制限あり) ◎(自由度高い) ◎(自由度最大)
セキュリティ管理 ベンダー依存 自社で設定・管理可能 自社で設計・責任
導入スピード 速い やや遅い 遅い
拡張性
維持・保守 楽(ベンダー管理) 自社対応が必要 自社対応が必要
向いている用途 小〜中規模/短納期 中〜大規模/高セキュリティ 特化型業務/独自要件

4. まとめ

CMS選びは「現状の要件」と「将来の運用」を見据えた判断が求められます。

クラウド型で素早く立ち上げるのも一つの選択肢ですが、セキュリティやカスタマイズ性が重視される業界ではオンプレ型や自社開発の方が適している場合もあります。

たとえば、製薬会社や医療機関、金融機関では、データの所在やアクセス制限が厳しく求められることが多く、クラウド型では対応できないこともあるでしょう。一方、スタートアップや中小企業にとっては、コストを抑えながらスピーディーに運用を始められるクラウド型が有効です。

短期的な導入コストだけでなく、長期的な運用体制や拡張性も含めて検討することで、自社に最も適したCMSを選ぶことができます。導入後の運用やサポート体制も含めて総合的に評価し、自社の成長フェーズや事業戦略に合ったCMS選定を進めましょう。