1. GA4とCMSログ、それぞれの役割とは?
Webマーケティングを行う上で「Google Analytics 4(GA4)」と「CMSログ」は、いずれも重要なデータソースです。しかし、それぞれのログが得意とする領域や取得できるデータには明確な違いがあります。目的に応じて使い分けることで、無駄な分析工数を減らし、成果につながる改善につなげることができます。
たとえば、GA4では全体の流入経路やページビュー数を俯瞰して把握するのに適しています。一方、自社CMSに蓄積されるログは「誰が・どのページを・何回見たか」といったユーザー単位の行動把握に優れています。
両者を混同してしまうと、「見たいはずのデータが見つからない」「本来の目的に合った分析ができない」といった事態に陥りがちです。この記事では、GA4とCMSログの違いと、それぞれの活用ポイントを解説します。
1-1. GA4の特徴と得意な領域
GA4はGoogleが提供するアクセス解析ツールで、Webサイト全体のパフォーマンスやユーザーの動向を俯瞰的に把握できます。
GA4の主な特徴:
- サイト全体のページビューやセッション、UU(ユニークユーザー)を計測できる
- 流入チャネル(Organic/Paid/Referralなど)の分析が得意
- イベントベースのデータ収集が可能(ボタンクリックやスクロールなど)
- コンバージョン(CV)計測も可能
- BigQueryなどとの連携による高度な分析も可能
こんなシーンで活用:
- SEO施策や広告施策の効果検証
- サイト訪問者全体の傾向分析
- 流入チャネルごとの比較
たとえば、ある企業ではSEOでの流入を増やすために定期的にブログを更新していました。GA4のレポートを見ると、特定の月からOrganic Search経由の流入数が大幅に増加。検索クエリやランディングページを確認することで、「どの記事が成果につながったか」が明確になり、以降のコンテンツ戦略に活かすことができました。
1-2. CMSログの特徴と強み
一方、自社CMSに蓄積されるログは「会員・ユーザーごとの行動」を深掘りするのに適しています。特にBtoBサイトや会員制サイトでは、CMS側でログイン情報を保持していることが多く、「誰が・いつ・どのページを何回見たか」という詳細なデータが取得できます。
CMSログの主な特徴:
- 会員・ユーザー単位での行動履歴が取得可能
- コンテンツ別の閲覧回数や滞在時間を詳細に記録
- PDFや動画などのリッチコンテンツの再生・DLログも記録可能
- フォーム送信履歴やキャンペーン反応状況も一元管理
こんなシーンで活用:
- 会員の興味関心を分析してリコメンドを行う
- ナーチャリング施策のセグメント条件として活用
- 営業連携に向けたホットリード抽出
たとえば製薬企業の医師向けサイトでは、ある医師が「ある製品の解説動画を3回以上視聴」「Q&Aコンテンツを毎週見ている」などの行動が確認できれば、「この製品に高い関心を持っている」と判断し、適切なタイミングでMRやメール施策につなげることができます。
2. 目的別で選ぶ!GA4とCMSログの使い分け方
GA4とCMSログは、それぞれの目的に応じて併用するのがベストです。以下に、目的別の使い分け方を整理します。
2-1. マーケティング施策の効果検証が目的の場合
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GA4をメインに活用
- SEOや広告、SNS投稿の効果検証
- 訪問数やページビュー、流入チャネルの把握
- CVの達成率の分析(フォーム送信など)
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CMSログは補足的に
- フォーム送信後の資料ダウンロードや閲覧履歴
- CV後のユーザー行動を追跡してナーチャリングに活用
2-2. ユーザーごとの興味関心を把握したい場合
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CMSログをメインに活用
- ログインユーザーの個別行動履歴
- 特定コンテンツへのアクセス頻度や滞在時間
- 会員ステータスや職種別の動向把握
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GA4は補足的に
- 全体傾向との比較(業界平均とのズレを見るなど)
このように、「匿名の多数」を捉えるGA4と、「個別の誰か」を把握できるCMSログという構造で、両者の得意分野を意識して併用することが重要です。
2-3. 実務上よくある“勘違い”と注意点
「GA4ですべてわかる」は誤解です多くの企業がGA4だけで完結させようとしがちですが、ユーザー識別や会員属性をもとにした分析には限界があります。
CMSログは設計次第で活用範囲が広がるCMS側で「どの行動をログに残すか」「どう分析しやすく設計するか」ができていないと、せっかくのログも宝の持ち腐れになります。
まとめ
GA4とCMSログは、どちらが優れているというものではなく、それぞれに得意な分析領域があります。GA4は全体傾向の把握と流入分析に、CMSログはユーザー単位の深掘り分析や営業支援に強みがあります。
特にBtoBや会員制サイトでは、CMSログを活用することで「誰が・何に関心を持っているか」という“文脈”が見えるようになります。それにより、より精度の高いマーケティング施策や、営業現場との連携が可能になります。
自社の目的に応じて「GA4で足りない部分をCMSログで補う」戦略的なログ活用を意識することが、成果につながる分析の第一歩です。