BtoBのマーケティングで、メールは情報提供、イベント告知、見込み客との関係維持など、幅広く使われるチャネルです。ただし「とりあえず送る」で成果につながるものではなく、誰に・何を・いつ届けるかの設計が要ります。

このページでは、メール配信のシリーズの公開記事を横断して、配信の前提、送る相手、1通の設計、連続した流れの設計、配信どうしの重なり、事故の防ぎ方を一つの流れにまとめました。反応の測り方は別のシリーズで扱っているため、最後の節で送り先を示します。

「送れば読まれる」を前提にしない

BtoBの商材は検討期間が長く、関与者も複数になります。一度の接点で決まらない前提に立つと、相手のペースで受け取れる非同期の接点として、メールは関係維持に向いています。また、開封やクリックといった反応を、送った相手ごとに記録できます。BtoBにおけるメール配信の基本は、「誰が、どの内容に反応したか」を手がかりに次の配信や対応を組み立てられることを、このチャネルの特徴としています。

一方で、設計の前提として2つの考え方が挙がっています。

  • 送れば読まれる、とは考えない。 受信箱の中でメールは他の大量のメールと並びます。読まれない場合がある前提で、件名と差出人名だけで「自分に関係がある」と分かるようにします。
  • 全員に同じ内容を送ることを疑う。 属性も関心も異なる相手に同一の文面を送ると、誰にとっても「自分向けではない」メールになりがちです。

設計は、配信対象・内容・タイミングと頻度・測定と改善の4つに分けると考えやすくなります。以下の節は、この4つに、連続した配信の設計と事故の防止を加えた順に並べています。

誰に送るか:関係を育てている相手の一覧として持つ

配信リストは単なるアドレス集ではなく、関係を育てている相手の一覧です。退会や重複の整理を含め、最新の状態を保つ運用が土台になります。

そのうえで、業種・職種・行動履歴・検討段階といった軸で相手を分け、内容を合わせることが設計の出発点になります。

相手を分ける抽出条件は、誤配信にも関わります。抽出条件の誤りや除外処理の漏れがあると、本来送るべきでない相手に届いてしまいます(誤配信)。顧客ステータスの管理元と配信システムの間で情報が同期されていないときにも起こり得ます。失敗の型に共通する背景の一つとして、抽出条件が担当者の頭の中にしかない属人化が挙がっています。条件を文書にし、配信のたびに属性・行動・除外の条件を確かめる方法は、後の「配信ミスを個人の注意ではなく仕組みで防ぐ」の節で扱います。

1通を設計する:開封・読了・行動

1通のメールへの反応は、「開封される」「読まれる」「行動される」の3段階に分けると設計しやすくなります。段階ごとに見られている要素が異なるためです。反応されるメールの設計は、件名が開封を、構成が読了を、CTAが行動を受け持つ、と整理しています。

段階 受け持つもの 考え方
開封 件名・差出人名・プレヘッダー 誰に向けた何の情報かが件名で分かるようにする。社名だけの「◯◯社のご案内」型は内容が想像できない。受信一覧で切れない長さをスマホで確かめ、重要な言葉を先頭側に置く。差出人名は誰からのメールか分かる名前にする。件名で伝えきれない「読む理由」をプレヘッダーで短く添える
読了 本文の構成 課題の提示→中身の説明→次の行動、の順に組み立てる。段落を短く区切り、見出しと余白で構造を見せる。冒頭に要点を置くと、全文を読まない相手にも主旨が伝わる
行動 CTA 「こちら」ではなく「資料をダウンロードする」のように、押した先で起こることを書く。本文の末尾だけでなく、主旨が伝わった位置に主となるCTAを置く。メールで伝えた内容とリンク先のページをそろえる(食い違うとそこで離脱する)。タップしやすい大きさか、レイアウトが崩れないかを配信前に実機で確かめる

本文の構成では、1通につき伝えることを1つに絞ること(1メール1メッセージ)も挙がっています。複数の話題を詰め込むと、どの行動も取られにくくなります。ステップメールの記事も、全部を1通で伝えようとせず、通ごとの役割を分けることを挙げています(次の節)。

流れを設計する:ステップメールの起点・順序・分岐・出口

ステップメールは、会員登録や資料請求といった出来事を起点に、あらかじめ組んだ順序と間隔でメールを自動配信する仕組みです。1通ずつ手動で送る配信と違い、相手ごとのタイミングに合わせて同じ体験を提供できます。ステップメール・シナリオ設計の基本と考え方は、シナリオを次の4つの要素で考えています。

  1. 起点(トリガー):会員登録、資料のダウンロード、セミナー申込など、相手の行動を起点にします。
  2. 順序と間隔:何通を、どんな順で、どれくらいの間隔で送るか。相手の検討の進み方を想像して決めます。
  3. 分岐:途中の反応(開封した・リンクを押した・フォームを送信した)によって、その後の内容を変えるかどうか。
  4. 出口:目的の行動に至ったら以降の配信を止める、最後まで反応がなければ通常の配信に戻す、といった終わり方です。

設計の順序としては、まずシナリオ全体で達成したいこと(「登録後に製品理解を深めてほしい」「資料請求から問い合わせにつなげたい」など)を決め、そこへ向かう順序として各通を配置します。目的のないシナリオは、単に自動で送られる複数のメールになります。各通には「最初の1通は使い方の案内」「次は関連する読み物」のように1つの役割を持たせます。

出口と停止条件は、開始前に組み込みます。目的を達成した相手に同じシナリオを送り続けるのは逆効果とされ、「フォームを送信したら停止」「配信解除で全シナリオ停止」といった条件が例に挙がっています。

シナリオに使う相手の絞り込みの考え方は、MA・他システムとの連携のシリーズ(スコアリングとシナリオ設計の基本、MAの総集編)で扱っています。

配信どうし、配信とWebの重なりを整理する

4本の記事を横断すると、他の配信や、リンク先のページ、イベントとの重なりに関わる注意が、複数の記事に繰り返し出てきます。

配信どうしの重なり(重複配信)。 自動のステップメールと手動のキャンペーンメールが重なる、複数の担当者が同じリストへ配信する、といった形で起こります。誰がどのリストをいつ使ったかが共有されていないことが背景です。ステップメールを動かし始めると、定期配信やキャンペーン配信と同じ相手に重なって届く場面が生まれるため、シナリオ設計の段階で、重なりをどう扱うか(一時的に定期配信を止めるか、間隔を空けるか)を決めておきます。

頻度。 頻度が過剰になれば、配信解除という形で表れます。

メールとリンク先・公開予定のずれ。 1通の設計では、メールで伝えた内容とリンク先のページをそろえることが挙がっていました。運用の側では、リンク先のページがまだ公開されていない、公開予約と配信予約の日時がずれている、という食い違いが、失敗の型「文面やリンクの誤り」の中で挙がっています。メールとWebを別々の担当が管理していると起こり得ます。

イベントや他の施策とのタイミング。 配信のタイミングは、相手の業務時間や、他の施策(イベント・公開予定)との整合を確かめて決めます。イベント前に届くはずの案内が後に届く、というずれは、配信予約そのものより、連動する側(ページの公開、リストの準備)の遅れが波及して起こります。

配信ミスを個人の注意ではなく仕組みで防ぐ

BtoBのメール配信では、一度の誤配信が相手の信頼や、配信そのものの継続に関わることがあります。メール配信でよくある失敗とその対策が挙げる失敗の型は、ここまでの節で触れた誤配信、重複配信、文面やリンクの誤り(日付・宛名の差し込み・URLの誤りを含む)、タイミングのずれに、迷惑メール判定を加えた5つです。迷惑メール判定は、HTMLの不備や配信元の評価低下により、届いても受信箱に入らない型で、装飾の多いテンプレートや古い埋め込みコードが原因になることがあります。

型は違っても、背景は似ています。

  • 抽出条件が担当者の頭の中にしかない属人化
  • 原稿とリンクを複数の目で見るフローの不在
  • 配信システムと会員・コンテンツ側の情報が同期されていない分断
  • 本番でしか確認できないテスト環境の不足

対策は、「気をつける」ではなく仕組みに置き換えることとされています。

配信前チェックを定型にする。 確認する項目を決め、毎回同じ手順で見ます。

確認の対象 見るところ
対象リスト 抽出条件(属性・行動・除外)
原稿 件名・差し込み・URL・日時
テスト送信 表示崩れ・差し込み・迷惑メール判定
スケジュール 他の配信や公開予定との干渉

属人化をなくす。 抽出条件やステップ設計を文書にし、担当が替わっても同じ品質で配信できる状態にします。

役割を分ける。 テスト配信と本番配信の権限を分け、一人で完結しない役割分担にします。

失敗を共有する。 起きたミスを責めずに記録し、チェック項目へ反映します。チェックリストは失敗の蓄積から育てるもの、とされています。

ステップメールの記事は、運用の注意として次のことを挙げています。シナリオが増えてくると「今、誰に何が動いているか」の全体像が見えなくなるため、稼働中のシナリオの一覧を管理し、定期的に棚卸しします。役目を終えたシナリオを止め忘れると、意図しない配信の温床になります。

反応を見て、次の配信に反映する

設計の4つめの要素は、開封・クリック・その後の行動を確かめ、次の配信に反映することです。記事の中で挙がっている見方は、次の2つです。

  • 1通については、開封・読了・行動のどの段階で反応が落ちているかは、配信ログで確認できる。
  • ステップメールについては、動かした後にどの通で反応が落ちるかをログで確かめ、順序・間隔・内容を見直す。シナリオは作って終わりではない、とされています。

このページでは、指標の定義や読み方は扱いません。メール配信のシリーズの公開記事は、測定の読み方を会員サイトのデータ活用と効果測定のシリーズに委ねています。開封率・クリック率などの読み方はメール配信の効果測定で、会員サイトのデータ活用全体は会員サイトのデータ活用と効果測定の総集編で扱っています。なお、メール配信の効果測定は、会員ごとの反応を読めることを「誰に届いたかが分かる会員サイトのメールならでは」としており、メール一般の特徴とするBtoBにおけるメール配信の基本とは置き方が異なります。

全体を通して見えること

4本の記事を横断すると、メール配信で考えることは次の順につながっています。

  1. 読まれない場合がある前提に立ち、全員に同じ内容を送ることを疑う
  2. 関係を育てている相手の一覧としてリストを保ち、相手を分ける
  3. 1通を、開封・読了・行動の3段階で設計する
  4. 連続した配信を、目的から逆算して起点・順序・分岐・出口で設計する
  5. 他の配信・リンク先・イベントとの重なりを整理する
  6. 配信前の確認・文書化・役割分担で事故を防ぎ、稼働中のシナリオを棚卸しする
  7. どこで反応が落ちたかを見て、次に反映する

失敗と対策の記事とステップメールの記事に共通しているのは、配信の質を担当者の注意に頼らず、仕組みの側に置く書き方です。確認項目の定型化、抽出条件やステップ設計の文書化、開始前に決める停止条件、稼働中のシナリオの一覧が、その例として挙がっています。