全員に見える状態は、最初は問題ではなかった

問い合わせフォームを作った当初、データを見るのはWeb担当と営業の数人でした。全員が全部を見られても、困ることはありませんでした。

そこへ、セミナーの申し込み、採用の応募、サポートの窓口と、フォームが増えていきます。管理画面を使う人も増えます。権限は最初の設定のまま、誰も見直していません。いつの間にか、採用担当が営業の見込み客の一覧を、営業が採用の応募者の情報を、見られる状態になっています。

見えすぎると、何が起きるか

  • 持ち出しや漏えいにつながる経路が増える:業務上必要のない人まで閲覧・出力できる状態では、情報を扱う範囲が必要以上に広がる
  • 本来の担当や用途を越えて扱われる:問い合わせ対応のための情報を、別の業務の担当者まで見られる
  • 説明できない:「この情報は誰が見られるのか」と顧客や社内の監査から聞かれて、答えられない
  • 扱いの重いデータが混ざる:採用の応募、苦情、個別の相談。見てよい人が限られるデータほど、全員に見える状態の影響が大きい

必要な人に、必要な分だけ

見える範囲は、三つの単位で考えます。

  • どのデータか:問い合わせ、申し込み、採用の応募。データの種類ごとに、見てよい部署が違う
  • どの件か:同じ種類のデータでも、自分の部署の担当分だけ、地域の分だけ、というように件で絞る
  • どの項目か:件は見てよいが、電話番号やメールアドレスまでは要らない、という役割もある

誰に何を見せるかは、仕組みの問題である前に、決めごとの問題です。部署ごと、役割ごとに、どのデータのどの件のどの項目が要るのかを、表にしておきます。

名簿を分けるか、見せ方を分けるか

見える範囲を分ける方法は、大きく二つあります。

方法 良いところ 気をつけること
部署ごとに名簿を切り出して渡す 渡した分しか見えないことが、はっきりしている 切り出した名簿は、元のデータと別に古くなる。コピーが増えるほど、漏えいの入口も増える
データは一つのまま、見せ方を分ける 常に最新のデータを見る。コピーが増えない 見せ方の設定を、誰がどう管理するかを決めておく必要がある

名簿を切り出す方法は分かりやすい反面、切り出した時点から古くなり、切り出したファイルがあちこちに残ります。データを一つに保ったまま、見る人ごとに見える範囲を変える方法なら、コピーは増えにくくなります。

項目の単位で伏せる

件は見てよいが、連絡先までは要らない役割があります。集計や分析の担当、委託先、件数を確かめたいだけの管理職。こうした人には、項目の一部を伏せて見せます。

伏せるなら、画面だけでなく、ファイルに出したときも伏せたままにしておきます。画面では伏せていても、出力したファイルに全部が載っていれば、伏せた効果が薄れます。

誰が見たかの記録

見られる範囲を絞るのとは別に、「誰が、いつ、どのデータを見たか」を記録する仕組みもあります。記録があれば、問題が起きたときにたどれます。

記録がない仕組みでは、見られる人をあらかじめ絞ることが、いっそう大事になります。自分たちの仕組みでどちらなのかを確かめておきます。

見直しの周期

権限は、一度決めても崩れていきます。

  • 異動や退職のとき
  • 新しいフォームを作ったとき(誰に見せるかを、作った時点で決める)
  • 委託先との契約が変わったとき
  • 半年に一度など、決めた周期で

新しいフォームを作ったときは、見落とされがちです。作った人が「とりあえず全員に」と開けたまま、見直されないからです。

writeWiredでは

writeWiredでは、問い合わせや会員のデータはフォームという単位で保存され、見える範囲はユーザーごとの権限とビューの組み合わせで決まります。

フォームごとの権限

  • 問い合わせ管理権限と顧客管理権限で、フォームごとに、ユーザーが使える操作の可否を割り当てる
  • ビューとメールには閲覧範囲を指定でき、担当のデータだけが見える状態を作れる
  • フォームの一覧に並ぶフォーム自体も、この権限で絞り込まれる
  • 会員の詳細やフォーム入力履歴に並ぶフォームも、ユーザーの権限で絞り込まれる

ビューで見せ方を分ける

  • 一覧はビュー(クエリーとリストの組み合わせ)の実行結果で、業務ごとに作り分けられる
  • 誰がどのビューを見られるかは、ユーザー権限の設定で決まる。ユーザーごとに見えるビューを分ければ、同じ会員データでも部署ごとに違う名簿になる
  • クエリーの各項目には省略時設定を持たせられ、「隠す」を選ぶと、条件を効かせたまま検索画面に出さない

項目を伏せる

  • フォームの項目ごとにマスク表示を設定でき、メールアドレスの一部が「****」のように表示される
  • マスクはCSVの出力にも及ぶ

見える範囲の三つの単位には、次のように当たります。どのデータかは、フォームごとの権限で分けます。権限のないフォームは、一覧にも会員の詳細にも並びません。どの件かは、各権限のビューとメールの閲覧範囲で、担当のデータだけが見える状態にします。条件を「隠す」で固定したクエリーをビューにして、そのビューを見られる人を権限で決める方法もあります。どの項目かについては、フォームの項目ごとのマスク表示があり、画面で伏せた項目は、CSVに出しても伏せたままです。

名簿を切り出して渡す代わりに、データを一つに保ったまま、見る人ごとに違う名簿として見せる、という分け方になります。

誰に何を見せるかの方針と、見直しの周期は、この仕組みの外側で決める運用です。

運用の困りごと 一覧へ