この記事でわかること
- 製薬マーケティングの基本と、一般的なマーケティングとの違い
- デジタル施策の普及によって変わった前提条件
- なぜ多くの施策が「やっているのに成果が出ない」状態に陥るのか
- 次回以降の連載で扱う「設計・運用」の全体像
製薬マーケティングとは何を指すのか
製薬マーケティングとは、医薬品を単に「売る」ための活動ではありません。
医師や薬剤師などの医療従事者に対して、適切な情報を、適切なタイミングで、継続的に提供し、信頼関係を構築していく活動全体を指します。
この領域には、次のような特徴があります。
- 意思決定までに時間がかかる
- 情報の正確性・信頼性が強く求められる
- 規制やガイドラインの影響を受けやすい
- 単発の訴求よりも「継続的な接点」が重要になる
そのため、短期的な反応を重視する一般的なBtoCマーケティングとは異なり、
中長期での関係構築を前提とした設計が求められます。
従来の製薬マーケティングが抱えていた課題
従来の製薬マーケティングは、MRによる対面活動を中心に構築されてきました。
- MRによる訪問・説明
- 紙資材や講演会での情報提供
- Webは補助的な情報閲覧手段
この形は長く機能してきましたが、環境の変化により次のような課題が顕在化します。
- 面談機会の減少
- 情報提供のタイミングが合わない
- 活動量は把握できても、成果との因果が見えない
- 部署ごとに施策やデータが分断される
結果として、「何をどれだけ届けたか」は管理できても、
「その情報がどう行動につながったのか」が把握しづらい状態が続いていました。
デジタル施策によって何が変わったのか
デジタル施策の導入により、製薬マーケティングの前提は大きく変わります。
- 医療従事者向け会員サイトによる継続接点
- コンテンツ閲覧・クリック・申込といった行動ログの取得
- 関心や行動に応じた情報提供の可能性
これにより、マーケティング活動は
「届けたかどうか」から「どう使われ、どう行動されたか」を見る方向へ進みました。
一方で、デジタル化が進んだからといって、
自動的に成果が出るわけではありません。
なぜ「施策はあるのに成果が出ない」のか
多くの現場では、次のような状態が見られます。
- 会員サイトは存在するが、活用の軸が定まっていない
- データは蓄積されているが、判断に使われていない
- KPIは設定されているが、改善行動につながっていない
これは、個々の施策の問題というより、
施策同士の関係性が整理されていない構造の問題と捉えることができます。
製薬マーケで詰まりやすい「設計の抜け」チェック
成果が出にくい状態では、次のような「設計の抜け」が起きがちです。
- 誰に:職種・専門・関心領域でセグメントが整理されているか
- 何を:コンテンツが「認知・理解・行動」のどこを狙っているか明確か
- どこで:会員サイト、メール、申込導線が分断されていないか
- どう測る:KPIがPVではなく行動ベースで定義されているか
- どう回す:仮説→改善→検証の運用サイクルが想定されているか
これらが曖昧なまま施策を増やしても、
成果が見えにくい状態は変わりません。
なぜ「設計」という考え方が重要になるのか
製薬マーケティングにおける「設計」とは、
画面や機能を決めることだけを意味しません。
- どの行動を、どのデータとして記録するか
- どの指標を、何の判断に使うか
- 誰が、どのタイミングで改善するのか
といった運用まで含めた全体構造を指します。
デジタル施策が増えた今だからこそ、
「何をやるか」よりも「どう組み立てるか」が重要になっています。
この連載で扱うテーマと位置づけ
本コーナー「製薬企業のデジタル施策設計」では、
製薬マーケティングを施策単位ではなく構造として捉える視点から整理していきます。
- 医師との関係性をどう設計するか
- 会員サイトを起点にどう施策をつなげるか
- 行動データをどう判断に使うか
- KPIやダッシュボードをどう設計するか
本記事は、その全体像を理解するための起点となる記事です。