■ 医師向けデジタル施策とは何か(定義)

医師向けデジタル施策とは、製薬企業が医師に対して情報提供・学習機会・コミュニケーションを行うために、Webやメール、オンラインイベント等を活用して接点を設計する取り組みです。

ここで重要なのは、「デジタル=オンラインでの露出」ではなく、次の2点を同時に扱うことです。

  • どの医師に、どの情報を、どの順番で届けるか(設計)
  • その結果として、どのような反応・行動が起きたか(行動データ)

つまり医師向けデジタル施策は、コンテンツ制作の話だけではなく、「継続的に成果を生む仕組みづくり」の一部です。

■ なぜ医師向けデジタル施策が必要なのか

医師向けデジタル施策が必要になる背景は、単に「デジタルが流行っているから」ではありません。製薬企業側の課題が、従来のやり方だけでは解きづらくなっているからです。

代表的には、次のような事情があります。

  • 医師の情報収集行動が多様化し、接点の作り方が一様ではなくなった
  • 施設・診療科・役職などにより、必要とする情報の粒度が違う
  • 伝えるべき情報が増え、単発の説明では理解・定着まで届きにくい
  • 施策の効果を説明できる指標(KPI)や根拠が求められる場面が増えた

このとき、医師向けデジタル施策は「MR活動の代わり」ではなく、医師の情報ニーズに合わせて接点を補う役割として価値を持ちます。

■ 製薬企業で使われる主なデジタル施策

医師向けのデジタル施策は、単体で完結するものではなく、組み合わせて使うことで意味を持ちます。代表的な施策は次の通りです。

  • 会員サイト(ログイン/会員向けコンテンツ/資材/動画/症例・解説など)
  • メール配信(お知らせ、コンテンツ案内、セミナー案内、フォローアップ)
  • Webコンテンツ(疾患・領域情報、製品情報、エビデンス解説、FAQなど)
  • Webセミナー(ライブ配信/質疑/アンケート/事後フォロー)
  • 講演会(オンライン/ハイブリッド含む。申込、出欠、事後視聴の導線が重要)
  • オンデマンド配信(講演・セミナーの見逃し、短尺解説、シリーズ動画)
  • 申込フォーム(Webセミナー/講演会/資料請求など。行動データの入口になる)
  • アンケート・簡易調査(認知・課題・興味の把握、次の出し分けの根拠)

ポイントは、これらを「施策一覧」として並べるだけでは成果が出にくいことです。どの施策も、会員サイトや行動データの設計とセットで考える必要があります。

■ よくある誤解:デジタル施策=単発施策

よくある失敗は、デジタル施策を「単発イベント」や「単発配信」として扱ってしまうことです。例えば次のような状態です。

  • Webセミナーを実施して終わり(申込・参加後の導線がない)
  • 講演会を案内して終わり(見逃し配信・関連コンテンツへの誘導がない)
  • メールを送って終わり(クリック後の体験が設計されていない)
  • 会員サイトを作って終わり(更新・出し分け・改善が止まる)

単発施策は、社内的には「実施した」実績になります。しかし、医師側の体験としては「その場で消費して終わり」になりやすく、継続接点が積み上がりません。

施策を単発にしないためには、「次に何を見てもらうか」「次にどんな行動をしてもらうか」を最初から設計しておく必要があります。

■ 会員サイト・行動データとの関係

医師向けデジタル施策の中心に置きやすいのが会員サイトです。会員サイトがあると、施策が次のように整理しやすくなります。

  • 施策の入口:メール、Web、セミナー/講演会案内
  • 施策の受け皿:会員サイトのコンテンツ、動画、資材、オンデマンド配信
  • 施策の記録:閲覧、クリック、申込、視聴、アンケートなどの行動データ

特に「申込(Webセミナー/講演会)」は、行動データとして強いシグナルになりやすい点が重要です。
単なる閲覧よりも、興味・検討の度合いが高く、次の案内やフォローの根拠になります。

また、会員サイトを起点にすると、医師の属性(診療科、施設区分、専門領域など)や関心テーマと行動を結びつけて考えやすくなります。これが、施策を改善し続ける前提になります。

■ 成果が出る施策設計の考え方

医師向けデジタル施策を成果につなげるための考え方は、「施策を増やす」よりも「設計の粒度を上げる」ことです。最低限、次の3点を決めておくとブレにくくなります。

  • 誰に:どの医師層を想定するか(医師セグメンテーションの前提)
  • 何を:届ける情報の核は何か(領域/疾患/製品/テーマ)
  • どう動いてほしいか:次の行動を何にするか(閲覧、申込、視聴、質問など)

例えば、Webセミナーや講演会を行うなら、実施そのものではなく、その前後が設計の中心になります。

  • 事前:申込ページ、案内メール、関連コンテンツの用意
  • 当日:視聴体験、質問導線、アンケート(目的に沿った設計)
  • 事後:オンデマンド配信、要点記事、関連テーマへの回遊、次回案内

このように「入口→体験→次の行動」までを一続きで考えると、単発施策になりにくくなります。

■ よくある質問(Q&A)

Q. 医師向けデジタル施策は、まず何から始めればいいですか?
A. 施策の種類を増やす前に、「どの医師に、どのテーマで、次にどんな行動をしてほしいか」を一度言語化するのがおすすめです。次に、会員サイト(受け皿)と申込・アンケート(行動データの入口)を整えると、改善が回りやすくなります。

Q. Webセミナーや講演会は、実施すれば成果が出ますか?
A. 実施だけでは成果は安定しません。申込・参加・オンデマンド配信・事後フォローまでを一連の設計として扱うことで、継続的な接点になり、行動データも蓄積されます。

Q. メール配信は、結局お知らせになりませんか?
A. お知らせで終わることが多いです。クリック後の体験(何を読ませるか、何へ回遊させるか)が決まっていないと、メールが単発化します。会員サイトのコンテンツ設計とセットで考えるのがコツです。

■ まとめ

医師向けデジタル施策は、Webやメール、Webセミナー/講演会、オンデマンド配信などの施策を「単発で行うこと」ではなく、会員サイトを起点に、接点と行動データを設計し、改善し続ける取り組みです。施策を増やす前に、誰に何を届け、次にどう動いてほしいかを決めることで、成果につながる形に整えやすくなります。

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