この1カ月半、writeWiredのサイトは、私が本文を書かずに作ってきました。機能の事実を台帳にして、AIが書き、私が判断する。前回はその仕組みをAIに監査させて、宿題を21個もらった話でした。今回はサイトの外に出ます。
今回やったことは、単純です。
- 自社製品の名前を隠す
- 顧客が抱えそうな困りごとをAIに作らせる
- その困りごとから、AIに実際の市場を探させる
- 市場で使われていた言葉と、自社サイトを突き合わせる
- 足りない言葉を事実で確認し、言ってよいことだけをサイトへ戻す
その結果、既存のページを8か所直し、これまで存在しなかった用途別ページ(LP)が1本増えました。以下は、その途中で見たものの記録です。
「競合を調べて」とは、頼まなかった
writeWiredにはCMSも会員管理もフォームもメール配信もあります。だから「writeWiredの競合を調べて」とAIに頼むこともできます。でも、それをやると、私が知っている製品カテゴリの中をぐるぐる回るだけになる気がしました。カテゴリの名前で聞けば、そのカテゴリの一覧が返ってくる。それは私の頭の中の地図をなぞるだけです。
そこで逆にしました。製品名も、CMS・MA・CRMという言葉も、一切与えない。最初にAIへ渡したのは、これだけです。
日本国内の約20の業種について、Web担当者が実務上抱えていそうな課題を挙げてください。製品名、サービス名、製品カテゴリ名を挙げないでください。
20業種から60個の困りごとが返ってきました。製造業の「型番数千の製品情報がサイトとカタログでバラバラに古びる」、病院の「診療科ごとの外来表の更新が事務に集中する」、協会の「会員名簿がExcelと紙」。どれも見覚えのある顔ぶれです。この60個を業種を外してまとめさせると12の型になり、その中から市場探索に向く10件をAI自身に選ばせました。ここまで、私がやったのは結果を次の指示へコピペすることだけです。この日の私は、ほぼコピペ職人でした。なお、この記事の終わりまでに、私の仕事はさらに減っていきます。
このとき使ったプロンプトは1本で、そのまま配布しています。コピーしてAIに貼るだけで、どの会社でも動きます。
困りごとで検索したら、別々の市場へ連れて行かれた
10個の困りごとを、担当者の相談文の形にして、その文でWebを検索させました。一番分かりやすかったのがFAXです。私が渡したのは、こういう文でした。
紙とFAXで受けている申請・発注をWebに移したい。受けた内容がそのまま記録になる形にしたい。
ところがAIが探してきたのは、Webの受付を作る会社ではありません。クラウドFAXと、FAXのOCR処理のサービスでした。紙をやめたいと言ったのに、紙を延命する市場へ着いた。
セミナーの課題も同じです。「募集から当日の受付、終わった後のお礼やアンケートまで一連で回したい」という相談文には、セミナー管理システムの専門サービスがずらりと並びました。イベント特化のもの、会員管理と決済とイベントを一体にしたもの、貸会議室の会社が始めたものまで。QRコードの当日受付やリマインドを備え、月額いくらと明示したページもあります。汎用の基盤やサイト構築の会社は、出てきません。
残りも同じことが起きます。多店舗のページ更新は店舗運営DXへ。製品情報の一元化はPIM/DAMという商品情報管理へ。閲覧企業の可視化は訪問企業を特定するツールへ。困りごとによって、AIが連れて行く市場が変わりました。
分かったのは、単純なことです。困りごとには、困りごとごとの専門の売り場が既にある。売り手は、自分の製品をどこかのカテゴリの棚に置いて考えます。でも、お客さんは、カテゴリ名ではなく、自分の困りごとの言葉から探すこともあります。その言葉で検索すると、カテゴリの棚には着かない。その困りごと専門の棚に着きます。
writeWiredは、一度も出てこなかった
そして、痛い事実がひとつ。この10回の検索で、writeWiredは一度も候補に出てきませんでした。
一方で、2つの別々の課題で顔を出す会社もありました。フォームとデータベースとメール配信を一体で持ち、用途別の入口ページを並べている国産のサービスです。つまり、うちと同じ型で戦っている会社は、この検索面に立っていて、うちは立っていない。
機能がないのか、言葉がないのか
普通なら、ここで「知名度がない」「SEOが弱い」と結論して終わりです。でも今回は、その前に確かめられることがあります。その困りごとを解けないから出てこないのか。それとも、解けるのに、その言葉でWebに書いていないのか。
AIが市場探索で実際に使った言葉と、うちの用途別ページの本文を突き合わせました。結果の一部がこれです。
| お客さんの言葉 | writeWiredにあった言葉 |
|---|---|
| 対応漏れ・二重返信 | 対応状況と記録が残る |
| FAX | 紙とメールの往復 |
| 価格表・規格書 | 資料や価格 |
| 営業に渡す | 誰がいつ何を見たか |
| リマインド・お礼メール | 参加者に一括で案内 |
| 打ち直し・二重入力 | 既存システムとつなぐ |
構造の説明はある。でも、担当者が口にする言葉のほうがない。「対応の記録が残ります」とは書いてあるのに、担当者が検索窓に打つ「対応漏れ」がない。合計で33個、こういう言葉が見つかりました。
見つけた言葉を、全部サイトへ入れたわけではない
ここで手が止まりました。33個をSEOキーワードとして全部足せば、次の検索には引っかかるかもしれません。でも、それをやってはいけない。競合の市場では「QRコードで当日受付」「代表アドレスの取り込み」「スマホから更新」が普通に出てきます。writeWiredが本当にできるとは限らない。
そこで、33個の言葉を1個ずつ監査しました。照合する先は二つ。サイトに公開している機能リファレンス——管理画面を1画面1ページで説明した、127本の事実の集まりです——と、同じくサイトに公開している過去の導入事例の詳細ページです。この2つのどちらかに根拠が見つかる言葉だけを通します。
- A:そのまま言える —— 12個
- B:言い方に条件を付ければ言える —— 18個
- C:現状の根拠では言えない —— 3個
Cの3個は、スマホからの更新、代表アドレスの取り込み、QRコードの当日受付でした。この3つは書きません。競合が書いていても、うちの根拠がないからです。
逆に言うと、33個のうち30個は、機能がまるごと欠けていたのではなく、Web上の言い方との距離でした。Bの直し方はどれも同じで、一段引くだけです。「対応漏れを防げます」ではなく「未対応だけを絞り込めるので、対応漏れに気づけます」。防ぐとは言えないが、気づけるとは言える。文章を書かせる前に、その文章を言っていいかを調べさせる。この順番は、このサイトを作ってきた間ずっと変わっていません。
10課題のうち9つには、すでに入口があった
監査を通った言葉だけを、必要な既存ページに戻しました。大改造ではありません。優先度の高い修正は8か所、ページにして6本です。
- 「紙とメール」→「紙やFAX、メール」
- 「資料や価格」→「資料や価格表」
- セミナーのページに「開催日を基準にしたリマインドも、終わったあとのお礼メールやアンケートも、同じ台帳から送れます」
- 資料ダウンロードのページに「閲覧の記録は、日次の連携で営業側の仕組みにも渡せます」
どれも一語か一文です。既にある機能の、既にある事実を、担当者の言葉で言い直しただけです。
ところが、10個の課題のうち1個だけ、様子が違いました。「Webで受けた情報を、基幹システムへ手で打ち直している」。機能はあります。連携の画面リファレンスも、基幹とつないだ導入事例もある。でも、この困りごとから入る用途別ページが存在しませんでした。整理すると、こうなります。
- 9つの課題 —— 既存のページがある。言葉を少し直す
- 1つの課題 —— 機能も事例もある。でも、入口だけがない
その入口を、作った
作ったのがこれです。
二重入力をなくすWebサイトの構築 —— Webで受けて、基幹へ流す
新しいアイデアをAIが思いついたのではありません。既に持っている事実に対して、入口が欠けていることを、AIが見つけました。ページに載っているのは、データ出力の設定画面、SQL出力、CSVの入出力、API、バッチの実行履歴——どれも既にあった機能リファレンスです。事例も既にあった基幹連携の3件。部品は全部あった。並べる棚だけがなかった。
最後は、CSVを取り込む係になった
今回、私は文章を書いていません。HTMLも書いていません。プログラムも書いていません。実際にやったことを、出てきたものと一緒に並べるとこうなります。
- 20業種から、60個の「困りごと」が出た——製品名もカテゴリ名も教えず、Web担当者の困りごとから始めると決めました。プロンプト自体もAIと一緒に作っています
- 60個が、12の課題パターンと10個の相談文になった——60個をそのまま次の指示へ渡し、「業種を外して似た困り方をまとめて」。私は分類していません
- 10個の相談文から、別々の市場が出てきた——クラウドFAX、PIM/DAM、訪問企業の特定、セミナー管理。そして10回とも、writeWiredは出ませんでした
- 市場の言葉と自社サイトを比べると、33個の差が出た——市場は「対応漏れ」「打ち直し」と言い、うちは「対応状況と履歴」「既存システムとつなぐ」と書いていました
- 33個を監査すると、30個は言い換えで済み、3個は書けなかった——機能リファレンスと導入事例を根拠にA・B・C。「書かない」が決まったのもここです
- 既存ページ8か所の修正と、新しいLP1本が決まった——ほとんどは一語か一文の修正。1課題だけ、入口のページそのものがありませんでした
- 最後にCSVが返ってきて、私はCMSへ入れた——修正も新しいLPも、AIがCSVにまとめました。私はそれをCMSへ取り込み、同じデータからカタログのPDFも生成し直しました
60個 → 12型 → 10検索 → 33語 → 30と3 → 8か所と1本 → CSV。何かが生成されて、そのまま次の工程の材料になる。この連鎖の中で、私が書いたものはありません。やったのは、出てきたものを読み、次へ渡し、「言っていい」を判断し、GOを出し、CSVを出し入れすることでした。コピペ職人の正体は、これです。
自分の会社でも、同じことができる
今回、AIに「二重入力のLPを書いて」とは一度も頼んでいません。AIがやったのは作文というより、既にある事実と外の世界を往復して、次に必要なコンテンツを見つけることでした。私の仕事は、何を書くかを最初から決めることから、AIが持ち帰ったものを判断して出し入れすることに変わっています。
これは、特別な仕組みがなくてもできます。手順は冒頭の五つのとおりで、1と2は配布しているプロンプトがそのままやります。ひとつだけ注意があります。5の事実確認を飛ばして「競合が書いているから自社も書く」をやってはいけません。今回も33語のうち3語は根拠がなく、書きませんでした。書かないと決めるのも、この工程の成果物です。
AIにページを書かせたのではありません。AIに、お客さんの困りごとから市場を歩かせたら、最後にうちのサイトへ必要なページが1本、見つかりました。
よく分からなかったら
この記事をそのままAIに貼って、
「結局、何をやったの? 自分の会社でやるならどうすればいい?」
と聞いてみてください。
配布しているプロンプトも一緒に渡せます。