会員サイトでは、画面上の短い言葉が利用者の行動を左右します。特に入力フォームでは、必須項目や入力形式、エラーの伝え方が分かりにくいだけで、手続きがそこで止まることがあります。
取引先向けのポータルであれば、招待した相手の初回登録、登録情報の変更、各種の申請や問い合わせ——会員サイトではフォームが対話の接点になります。しかも対面の会話と違って、相手が困っている様子を目の前で見ることはできません。確認できるのはアクセス数や送信数などの数値だけで、つまずきのポイントには提供側が気づきにくい。この非同期性が、フォームまわりの設計を難しくしています。
ここでは、こうした「サイト上の言葉」を扱うUXライティングの考え方と、登録・フォームでユーザーがつまずきやすいポイントをまとめました。
UXライティングとは
UXライティングは、サイトやサービスを使う時に読む文章のライティング技術です。ボタンにのせる文言、入力欄に添える説明、エラーメッセージ——そういった細かなパーツの言葉を考えることが該当します。ユーザーの目を引くためのコピーライティングとは違い、道具として使うこと、その体験に焦点をあわせたライティングです。
フォームまわりで果たす役割は、突き詰めるとふたつです。
- 迷わず使える——次に何をすればいいかが、読んだ瞬間にわかる
- 意図が正しく伝わる——何を、どう入力してほしいのかに誤解が生まれない
水道や電気のように、普段は特段意識することなく当たり前に使えるもの。フォームをそのような状態にすることが、UXライティングの目指すところです。
登録とフォームでつまずきやすい4つのポイント
まず会員になってもらうためにも、登録後にプロフィール情報の更新や申請などの対応をしてもらうためにも、入力フォームで失敗しないよう基本事項を押さえておきましょう。
- 入力項目が多すぎる
- 必須項目や入力形式が伝わらない
- エラーや入力漏れが伝わらない
- 入力した情報の使われ方が伝わらない
1. 入力項目が多すぎる
顧客を知り、その上で細やかなコミュニケーションを目指す会員サイトは、その性質上、顧客情報データベースとしての側面を持っています。業種は、規模は、自社サービスのどのような利用を想定しているかなど、ヒアリングしたいことはいくらでもあります。そのため、会員登録時の入力フォームはボリュームが多くなりがちです。
しかしこれには落とし穴があり、情報入力というのは面倒なものです。ログインして使う会員サイトの特性上、メールアドレスやパスワードの入力も欠かせないため、登録時の作業はどうしても多くなります。
登録時に本当に必要な項目を絞り、「できれば欲しい」情報は後から取得できないか検討します。登録の結果、ユーザーがサイトを気に入って繰り返し訪れてくれたなら、より便利に使うための情報入力には自然と協力してもらえます。
2. 必須項目や入力形式が伝わらない
電話番号までは不要だろうと思っていたら必須項目だった、半角で入力する必要があるのに全角で入力していた、住所がいくつもの入力欄に分かれていて文字数や切り方がわかりにくいなど、フォーム入力する際につっかえるポイントは多々あります。
作る側にしてみれば、フォーム入力の注意書きに気づいてもらえないこともあり、説明を増やせばよいというわけではないのがまた難しいところです。解決するために有効なのは、できるだけ指定を少なくすることです。
形式はできるだけ指定せず自由に入力できるようにする、必須項目はマークをつけてひと目でそうとわかるよう目立たせるなど、工夫を重ねてユーザーの足を止めないようにしましょう。
3. エラーや入力漏れが伝わらない
一般的に、フォームの入力エラーは確認ボタンや送信ボタンを押した時点で表示されます。しかしユーザーの心情としては送信ボタンを押した時点で自分の仕事は完了しているので、その後に修正をするのはおっくうに感じられます。読み込みが入った後の表示だと、場合によってはエラーが出ていることに気づかず、編集や入力が完了したと誤解してしまい、そのまま離脱してトラブルになることもあります。
これを防ぐために有効なのは、エラー内容のリアルタイム表示です。必須項目の抜けがあったり、形式の違いや文字数オーバーなどのエラーが発生した際に即時にエラーメッセージを表示することで、修正のハードルを下げることができます。
4. 入力した情報の使われ方が伝わらない
入力する情報が、提供する機能やサービスに直接関連のないものだった場合、「この情報は何に使われるんだろう」という不安が生まれます。この不安も、入力の手を止める要因のひとつです。
対応の方向は説明を増やすことではありません。フォームまわりの情報量が増えるほど「手間がかかる」という印象が強くなります。まずは用途の説明が必要な項目自体を減らすこと。その上で、必要な項目には用途をひとこと添えることです。
また、入力した情報がサイト上で他の会員にも表示される場合は、何がどこまで公開されるのかを、項目ごとに入力時点で確認できるようにしましょう。後から「こんなところに出るとは思わなかった」となることが、いちばんの信頼低下につながります。
フォームの手前で——何ができる場かを伝える
登録やフォーム入力は、それ自体が目的ではありません。その先で何ができるかが伝わっていなければ、どれだけフォームを磨いても手は動きません。
招待した取引先に使ってもらう会員サイトなら、案内のメールやトップページに「この会員サイトでできること」を明示しておくこと。資料が探せる、申請がここで完結する、最新情報が届く——用意した場の価値が先に伝わっていれば、登録もその後の入力も「やらされる作業」ではなくなります。
そもそもエラーが発生しない、迷いが生まれないフォームが理想ですが、人のやることにはどうしても間違いが発生します。フォームの不便さはユーザーにとって不満のもとですが、わざわざそれを言ってくれる人は多くありません。運営側では気づきにくいポイントもあるので、きゅうくつな思いをさせていないか、ユーザーの声も聞きながら改善してみるとよいでしょう。
