まずは小さく始めたい

新しい商品やサービスが登場した時、興味はあるもののいきなり多額の予算は用意できない、シンプルな形にすることでコストを抑え、まずはお試しでやってみたい、と考える人は少なくないはずです。会員サイトにおいても同様です。顧客向けの会員サイトを作ってみたい、しかしイメージがわかない、予算もない、そんなふうに悩んでいませんか。

これは会員サイトに限ったことではありませんが、Webサイトを構築する際にどのくらい費用がかかるかは個々のニーズによって実にさまざまです。機能や情報量を絞り、商品購入や申込みに絞った1ページだけのサイトもあれば、多種多様なページを用意しユーザーの利便性を追求したボリュームサイト、高性能サイトもあります。

企業情報をまとめたコーポレートサイトなどよりもイメージがわきにくい会員サイト構築においては、何も「オプション」をつけないベーシックな状態を知っておくことも、自社の会員サイトに何が必要か知り、選んでいくために有効な方法のひとつといえるでしょう。

Webサイト構築にあたって必要なものを大きくわけると「コンテンツ」と「システム」のふたつ。制作にあたってはどちらもプロの手を借りるのが一般的です。しかし、制作に何かの資格が必要であるとか、どうあっても自分でできないハードルが存在するわけではありません。

ここでは会員サイトにおいて「もっとも費用を抑えたプレーンなサイト」を目指す場合にはどのようなものとなるかをまとめました。ただし前提としてひとつ。会員サイトは顧客の個人情報を預かるものです。信頼してもらえるシステムであることがもっとも重要です。コストを抑えた構築を進める場合も、この点は押さえておいてください。

会員サイト構築の軸その1:コンテンツ

  • 会員限定の特典やキャンペーン
  • 新商品やイベントの告知
  • 業界や顧客ニーズを理解したコンテンツの会員限定提供

クーポンなどの限定特典、新情報の告知、専門的知識をまとめた資料。一般的な顧客むけ会員サイトでは、そのようなコンテンツが主流です。機能を絞ったシンプルな形でいくか高性能を求めるかに関わらず、登録してもらうためにはそこでしか見られないもの、登録することで得られるメリットが欠かせません。自社の顧客が必要とするものは何か、リサーチを重ねましょう。

「コストを抑えたシンプルな運用を想定していたのに、限定プレゼントや顧客が喜ぶ専門的な情報なんて用意できるだろうか」「初期のコンテンツは準備できたとして、継続して更新していけるのだろうか」と不安になった人もいるかもしれません。しかしここは、会員サイト構築をプロにお願いする場合であっても欠くことのできない要素です。

顧客が興味を持ち、購入してくれる商品・サービスを提供している企業には、魅力あるノウハウ、すなわちコンテンツの種が必ずあります。しかしそれはあくまで種であり、丸投げしてそのままコンテンツになるわけではありません。金銭的な費用だけでなく、自社の人員を割りふり、時間と手間をかける必要があるでしょう。

くわえて、最終的に会員サイトの作成を外部委託するにしても、顧客との信頼関係づくりは短期間では完成しません。オープン後、更新し続ける必要があります。特にBtoB領域では、顧客にとって有用な、現場感のあるコンテンツをスピード感をもって作成するにあたり、多方面で専門家である自社の視点が非常に重要です。自社がもつ資産をコンテンツにかえ、信頼につなげていきましょう。

会員サイト構築の軸その2:システム

作ったコンテンツ(文章や画像など)をWebで閲覧できる状態にするためには、HTMLやCSSを使って体裁を整える必要があります。現在のWebサイト作成・構築の多くはCMS(Contents Management System)に支えられています。CMSを使うことにより、テンプレートを利用した効率的なWebサイトの構築、専門知識を持たない人も更新できる継続的なサイト運用が可能となります。

多くのWebサイトで利用されているCMSのひとつ、WordPressも無料で使えるオープンソースのシステムです。システムが無料で使えるとはいえサイト構築には知識・技術・時間が求められますが、無料でできる範囲は実に広大です。追加機能を使用し機能拡張することで、会員サイトを作ることも可能です。

専門家に作成を依頼するにしても、完全オリジナルのWebサイト構築ではなく、WordPressやWordPressのプラグインを利用した構築を視野に入れることでコストを抑えることができます。やりたいことの規模・どの程度独自のカスタマイズが必要なのかに合わせて検討してみるとよいでしょう。

WordPressで実現できる基本機能

WordPressに会員向けのプラグインを追加することで、会員サイトの基本的な機能を構成できます。
たとえば、以下のような機能は会員サイト作成用プラグインWP-Members Membershipを利用することで実現可能です。

  • WP-Members Membershipプラグイン
    https://ja.wordpress.org/plugins/wp-members/

  • 会員登録機能
    ユーザーによる会員登録/登録情報変更ができるページの作成、登録時に必要なプロフィール情報の設定

  • ログイン機能
    ID/パスワードを指定してのログイン・ログアウト機能、ユーザーがパスワードを忘れてしまった場合のリセット(再発行)機能

  • メール送信機能
    会員登録時やパスワード再発行など、サイト利用に伴うメール送信機能。送信するメールの文面や署名などの編集

  • 限定コンテンツの公開機能
    会員のみ閲覧可能/誰でも閲覧可能など公開範囲の制限/指定をしたページの作成機能

「登録した会員だけに限定コンテンツを見せる」という会員サイトの一番の基本形は、この構成で実現できます。会員サイトの入り口としてWordPressで小さく始めるのは、十分に合理的な選択です。

基本形の先にあるもの

一方で、会員サイトは作って公開しておけばいいというものではありません。顧客情報をデータベースとして管理し、アクセス頻度や閲覧状況などの行動履歴を確認する。顧客ごとのきめ細やかな分析を、今後のコミュニケーションに活かす。そうした運営側にとっての機能が、会員サイトの価値の大きな部分を占めます。オフラインで買ってもらった商品のサポートや商談の予約など、会員サイトの中身(価値)と機能(システム)が一体化した形を目指す場合もあり、このあたりから、複数の機能や運用を組み合わせる必要が出てきます。

BtoBで要件が複雑になってきたら——見直したい5つの点

取引先や代理店向けなど、BtoBの会員サイトでは、運用が本格化するにつれて要件が段階的に複雑になっていきます。「シンプルな会員サイト」から先へ進むかどうかは、次の5点で見直すのがおすすめです。

  1. 会員の管理単位
    個人単位の登録で足りるか、「会社×担当者」で管理したいか。招待制にするか、契約終了時にアクセスを止める運用をどう回すか。
  2. 見せ分け
    全会員に同じコンテンツでよいか、属性やグループによって閲覧できる情報を分けたいか。
  3. 更新と承認
    誰が更新し、誰が確認して公開するか。担当者が変わっても運用が続く形になっているか。
  4. 既存システムとの連携
    顧客管理や基幹システムの情報と、会員サイトの会員情報を突き合わせる必要があるか。
  5. 行動履歴の活用
    誰がいつ何を見たかを、会員単位で把握して営業やフォローに使いたいか。

これらが当面不要なら、WordPressで小さく始める判断はそのまま有効です。逆に複数が「必須」になってきたら、プラグインの積み増しで対応し続けるか、会員管理とコンテンツ管理が一体になったシステムを検討するか——ここが構成を見直すタイミングです。どちらに進むにしても、この5点を言葉にしておくと、社内の検討も外部への相談も具体的に進められます。